某町の誤振込み問題について

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某町の新型コロナウィルス関連の給付金を誤振込みした問題で,マスコミの批判は,振込みを受けた町民に集中しているようです。私は,この問題について,もう一人,批判されるべき存在がいると思っています。それは,誤振込みをした町役場の職員ではありません。これを受け付けた金融機関です。

報道によると,誤送金の手続きをした町職員は,すぐにミスに気づき,その日のうちに銀行に連絡をしたといいます。誤送金を受けた町民側は,どうもこれを何かに使ってしまったということらしいですね。しかし,この町民が誤送金があったことに気付くまでに,相当の時間があったはずです。町職員がミスに気付き,銀行に連絡をした時点で,銀行側で何等かの措置ができていれば,このような結末にはならなかったのではないかと思うと,残念で仕方ありません。

こうした誤送金があった場合,多くの銀行は,ただちに送金手続の取消しをするのではなく,誤送金を受けた側の了解をもらって,初めてその取消しをするという手続きをします。それが誤送金であることが明白であるにもかかわらずです。おそらく,この送金手続自体が,高速複雑に処理されていて,一回その手続きをしてしまうと,これを取消すのに相当の手間がかかるためでしょう。

このようなことは,金融取引がネットで処理されない一昔前では,あり得ない話ではないでしょうか。おそらく,窓口で気付いて銀行職員にお願いすれば,その場で誤送金の手続きが止まったことでしょう。送金が高速で処理できるようになったというのは便利です。しかし,こう考えると,便利さを手に入れる代償に,私たちは大切なものを失いはじめているようにも感じるのです。

いろいろな物がめまぐるしい速さで便利になっていく時代ですが,果たしてその便利さは,本当に必要でしょうか。手間やコストはない方が良いと思われていますが,本当にそうでしょうか。今一度,本当に必要なものは何か,立ち止まって考えてみる時期に来ているのかもしれません。

追記

この原稿を書き終わった後で,この件,ご送金分の9割方が回収されたとのニュースが入りました。そうだとすれば,この原稿を撤回するべきかとも考えましたが,ニュースによれば,この回収に協力したのは銀行ではなく決済代行業者であったとのことです。金融機関が柔軟な対応をしたものではない,ということなので,この原稿は維持します。

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