事務処理の方法(基本編)

弁護士は,紛争解決のエキスパートで,常に裁判を意識して相手方と交渉しています。相手方と交渉・裁判する方法は,法律事務所の個性がもっともでる部分です。多摩オリエンタル法律事務所の事件処理方針は,次のQ&Aを参考にしてください。

▼Q&A一覧

Q1 契約書がなくても売掛金請求の訴えは可能ですか?
Q2 内容証明郵便はどのような場合に送るのですか?
Q3 公正証書を作成する必要はありますか?
Q4 多摩オリエンタル法律事務所は,依頼をすれば,必ず受任をしてくれますか?
Q5 裁判所に訴えを提起すると,話合いでは解決できなくなるのですか?
Q6 事件の解決を弁護士に依頼した場合,どれくらい時間がかかりますか?
Q7 判決が確定しても相手が金を払わない場合は,どうすれば良いのですか?
Q8 訴え提起から判決が出るまでに時間がかかるとのことですが,相手方はその間に資産隠しをしませんか?

Q1 契約書がなくても売掛金請求の訴えは可能ですか?

訴訟を提起するためには,相応の証拠が必要です。被告に売掛金請求をしようとする場合,契約書はそのもっとも基本的な証拠となります。
しかし,契約書がないからといって,ただちに訴え提起をあきらめる必要はありません。見積書や,請求書なども証拠になりますし,このような書類が一切なくても訴え提起が可能なケースも考えられます。訴え提起をする場合にどのような証拠が必要になるかは,その事案の内容によって異なります。ですから,手元に証拠がないからといって,簡単に請求をあきらめるのではなく,まずは弁護士に相談することを心がけてほしいところです。
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Q2 内容証明郵便はどのような場合に送るのですか?

内容証明郵便は,日本郵便株式会社が,その差し出した書面の内容を証明してくれる郵便であり,裁判上強力な証拠となります。しかしその反面,これを受け取った側は気持ちを害することが多く,話し合いで解決できる事案をかえって紛糾させてしまう原因にもなります。このため,多摩オリエンタル法律事務所では,内容証明郵便にする必要がない書面は,極力,普通郵便で送付するように心がけております。

多摩オリエンタル法律事務所で内容証明郵便を送付するのは,主に次のようなケースです。

①弁護士が選任されたことを明確にする
残念なことに,相手方の中には,こちらが代理人を立てたことを無視して,本人を脅迫しようとする人もいます。離婚事件などで代理人を立てなければ依頼人の身辺に危険が及びそうな場合は,内容証明郵便で相手方に警告を発します。
②相手方に通知しなければ法律効果が発生しない場合
契約の解除など,相手方に意思表示をしなければ,法律効果が発生しないものもあります。そのような場合は,内容証明郵便を発送し,解除をいつしたのか明確にします。
③金銭の請求時期を明確にする
金銭請求の中には,明確にその請求をしなければ,遅延損害金が発生しないものもあります。この場合,内容証明郵便で請求書を発送し,遅延損害金の起算点を明確にしておきます。

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Q3 公正証書を作成する必要はありますか?

相手方と示談が成立した場合,その内容を公正証書にする場合があります。公正証書を作成すると,裁判所に訴えを提起して勝訴判決を得なくても,強制執行することが可能になります。したがって,当方から強制執行する予定がないような事案の場合は,あえて公正証書の作成を提案することはありません。
また,公正証書の作成には相応の費用が必要となり,事前に公証役場との折衝が必要となるなどの手間がかかる場合もあります。また,強制執行の必要があるといっても,示談がまとまる事案であれば,簡易裁判所の調停手続を利用するという方法があります。調停調書が作成されれば,これをもとに強制執行が可能になるからです。そこで,相手方に金銭請求をしていて,約束違反の場合は強制執行の余地を残しておくべき事案であっても,必ずしも公正証書を作成するとは限りません。
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Q4 多摩オリエンタル法律事務所は,依頼をすれば,必ず受任をしてくれますか?

契約前の打合せで,事件の見込みを説明させていただきます。この段階では,明確な判決予想は立てられませんが,勝訴の見込みが低い事案の場合は,その旨を説明します。それでもご依頼を希望される場合は,契約条件次第ですが,受任いたします。
ただし,当方が弁護士を選任すれば,相手方が必要以上に警戒し,かえって話合いが紛糾するような事案もございます。そこで多摩オリエンタル法律事務所では,例えば相手方に送付する書面の作成を代行し,当面様子を見るにとどめるような対応をする場合もございます。その場合でも,当人同士の話し合いでは埒があかなければ受任いたしますし,弁護士を選任するリスクを冒しても依頼を希望されるのであれば,当然,受任いたします。
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Q5 裁判所に訴えを提起すると,話合いでは解決できなくなるのですか?

訴えの相手方(被告)となった側は,一般に強い屈辱感を覚えるようです。これは話合いで解決するうえで大きな障害となるので,話合いの余地があるのであれば,安易に訴えを提起しないほうが良いでしょう。
とはいうものの,民事訴訟手続には,和解という制度があり,双方当事者が納得すれば判決になる前に事案を解決させることができます。そして,裁判所は,弁護士が当事者を代理するケースが多く,第三者である裁判官が間に立つので,意外と和解による解決が多いです。平成26年度の司法統計によると,地方裁判所の民事事件第1審で判決となったのが6万1462件だったのに対し,和解で解決したのが4万8683件でした。訴えを取り下げる場合は,背後で何等かの話合いが行われているケースが多いのですが,その件数は2万6114件です。判決で解決したといっても,そのうち2万1195件は欠席裁判ですから,相手方が出頭してきたケースの半分以上が話合い(和解等)で決着したことになります。訴えを提起したから話合いができなくなったということは,あまりないようです。
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Q6 事件の解決を弁護士に依頼した場合,どれくらい時間がかかりますか?

事案の性質によるところであり,一概にはいえません。多摩オリエンタル法律事務所の場合,令和3年3月31日現在で,これまで処理した全事件平均で300日でした。ただし,複雑な事件になると,解決まで数年かかったものもありますし,簡単な事件で受任して1ヵ月以内に解決してしまうようなケースもありました。
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Q7 判決が確定しても相手が金を払わない場合は,どうすれば良いのですか?

強制執行手続き(差押え)を行います。しかし,差押えといっても,差し押さえるものを明確にしないと強制執行を申し立てることはできません。差押えの対象は,具体的には,銀行預金であったり,不動産であったり,自動車であったり,等です。多摩オリエンタル法律事務所では,相手方に対し訴えを提起する際は,相手方にこのような資産があるかどうかも調査します。
しかし,相手方の資産調査といっても,例えば相手方がどこの銀行にどのような口座をもっているかなどは,簡単には分かりません。差押えをするには,相手方がもっている銀行口座の銀行名と支店名まで特定しなければならないのですが,ここまで調査しきれるものではありません。
そこで,どうしても相手方の差押える財産が見つからないというときは,裁判所に財産開示手続きの申立を行います。この手続きをとることにより,相手方がどのような財産をもっているか,わかることがあります。
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Q8 訴え提起から判決が出るまでに時間がかかるとのことですが,相手方はその間に資産隠しをしませんか?

そのようなおそれがあるときは,仮差押えと呼ばれる保全手続きをとります。この手続きは,相手方の意見を聞かずに,その財産を「仮に」差し押さえるものであり,相手方が資産隠しを防ぐことができます。
ただし,この仮差押えは,相手方の意見を聞かずに行うものですから,裁判所の判断は慎重になりがちです。つまり,相当厳密に証拠が必要となります。また,一定金額の供託も必要となります。
この仮差押え手続きに成功すると,相手方が判決前に請求額を支払ってくることもあります。
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