自宅の登記や銀行預金の名義書換等,相続の手続はかなり面倒くさいです。原則として,それぞれの手続ごとにすべての相続人の実印と印鑑登録証明書を取り寄せなければならず,しかも法務局や金融機関ごとに要求される資料や必要とされる遺産分割協議書等の書式(文言)が微妙に異なり,少しでもマニュアル違反があると名義書換に応じてもらえず,遺産分割協議書の作成をやり直しさせられるということも珍しくありません。そこで遺言公正証書が一通でもあれば,必要な資料や手順がかなり簡素化されます。残された家族の相続手続の手間を考えれば,遺言公正証書を作成しておくメリットはかなりあろうかと思います。
遺言公正証書を作成する際は,「遺産はすべて現金化して,これを法定相続分で分割する」という内容にしておくのが,もっともトラブルが少なくすみそうです。何か思うところがあって,特定の相続人に多く相続させたい,あるいは少なく相続させたいという場合は,遺留分に注意が必要です。例えば,2人以上の子がいる場合に,そのうちの1人にまったく相続させないという遺言書を書いてしまうと,その子が,多く相続をもらった子に対して遺留分(子の場合は法定相続分の半分)を請求することができますので,かえってトラブルを大きくしてしまう傾向がありますので,ご注意ください。
遺言は,公正証書の形式で残す必要はなく,自筆によっても可能です。けれども,自筆遺言は,書き方を誤ればそれだけで無効となってしまい,かえって相続人間に物議を与えてしまう危険が高いので,明日にも死期が迫っているような緊急の場合でもない限り,避けた方が良いように思います。
遺言は,原則として,生前に,家族「全員」に対して,その内容を明らかにしておいた方が良いと思います。秘密裡に遺言書を書いておき,これを家族の「一部」にだけ預けていると,後にほかの家族から「あの遺言書は書かされたものだ」などと言われるおそれがあります。あるいは,自分の面前で,家族間で自分の相続のあり方について話合いをさせ,その内容通りの遺言を作成するというのもあって良いと思います。遺言の内容を家族が知ると,その内容に不満をもった者が「遺言を書き換えてほしい」とお願いすることがあるかもしれません。けれども,誰も遺言の書換を強制することはできませんので,こういう要望に対しては毅然としてお断りの対応をされた方が良いと思います。高齢になると,自分がどれだけ認知能力を維持できるか不安になるもの,そういったときは,潔く成年後見等を受け入れるのも方法のひとつでしょう。認知能力に問題があるときに遺言を書かされたような場合は,その当時の認知能力を立証することにより,その遺言を無効とできる場合があります。逆に言えば,遺言を書いた当時の医師の診断書を残しておけば,後に認知能力不足による遺言無効を主張されるリスクが低くなるということです。
以上が,遺言を残す場合に気を遣った方が良いことのあらましです。具体的には,ケースバイケースの判断となります。こういうわけで,相続を意識されはじめましたら,家族がこれでもめることがないよう,ぜひ多摩オリエンタル法律事務所にご相談ください。
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