退職金について

本日は退職金についてです。

退職金は「賃金の後払い」的な性格があるとされ,我が国の法制上厚く保護されているところです。裁判例でも,賃金の後払い的要素の強い退職金全額を不支給とするには,それが労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な背信行為があることが必要とされています。そのためでしょうか,現在在籍している会社の退職金が,近日中に退職する予定もないのに,資産として取り扱われる場面があります。

まず,退職金も差押えが可能です。これは,何年後になるか分かりませんが,将来,債務者が退職した時に,差し押さえた債権者が退職金を受け取れるものというに過ぎません。ですから,この点については違和感を持たれる方は少ないと思います。

しかし,この差押可能という概念を推し進めていくと,債務者が破産した場合に不都合が生じます。それが資産として計上されるものである以上,債務者が破産する場合は,退職金を債権者に提供しなければなりません。その提供が10年以上先の退職時で構わないということであれば問題ないのですが,ひとたび破産手続開始決定が発令されれば,破産手続きを10年も続けることはできません。そこで実務では,退職金(の8分の1)に相当する金額を債務者に提供してもらって,破産手続の中では退職金それ自体は取り立てないという運用をしています。それでも,破産手続開始決定時に退職すれば1000万円の退職金が支給されるという場合は100万円以上の現金を破産する債務者が用意しなければならなくなります。これでは,債務者が破産するためには現在の職を辞さなければならないことにもなりかねず,非常に酷なこととなります。

これが破産の場面であれば,「破産の責任を取るとはそういうことである」として,まだ世間の理解が得られることも考えられます。しかしそれが,離婚の場面ではどうでしょうか。定年退職まであとわずかという場合や,現在病気休職中で近く退職する予定があるという場合であればいざ知らず,これも財産分与の対象とされてしまうと当人に十分な現金や預貯金がない場合に極めて酷な結果となってしまうのです。財産分与は,離婚当事者の有責性関係なく請求できる権利ですから,退職金も含めた資産で財産分与額を計算して,離婚時にこれを一括払いするのが原則です。その相手方が話の分かる方で,分割払いに応じてくれるというのであればまだしも,そうでなければ,財産分与する方は退職しなければ財産分与をすることができないという事態に陥ります。

ここまでくると,果たして無条件で退職金を資産として計上して良いか,極めて疑問であります。退職金は厚く保障されるべきというのは,理念としては賛同しますが,その保護の在り方はまだまだ検討の余地がありそうです。

~多摩オリエンタル法律事務所~

多摩センター駅徒歩3分。夜間・休日も対応いたします。債務整理のご相談は無料です。多摩市、稲城市の方からのご相談が多い事務所です。債務整理・離婚・相続・後見等の個人事件や、売掛金回収・倒産等の法人事件の実績多数あります。

年末年始の休業期間のお知らせ

多摩オリエンタル法律事務所の年末年始の業務時間は次のとおりです。

令和4年12月27日まで 通常通り,午前10時から午後5時まで。

令和4年12月28日 午後12時まで。

令和4年12月29日から令和5年1月4日まで 休業します。

令和5年1月5日より 通常どおり,午前10時から午後5時まで。

何卒,良いお年を過ごされますよう,よろしくお願いします。

弁護士に示談交渉を依頼する場合は?

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: IMG_0438-2-rotated.jpg問題は解決したいけれども裁判は起こしたくない――このようなご相談をよく受けます。多摩オリエンタル法律事務所では,示談交渉の依頼は一律着手金11万円(税込)でお受けしていますので,お気軽にご相談ください。とくに,次のような場合は,弁護士を介入させる意味があるとみます。

 ① 証拠上圧倒的に有利なところで相手方を説得する場合

法的措置に出た場合の相手方の不利益を通知して,相手方に示談交渉に応じるよう説得します。こちらが弁護士を選任すれば,相手方も弁護士を選任することも多いですが,こちらの立場が証拠上圧倒的に有利であれば,相手方が選任した弁護士が,相手方に示談交渉に応じるよう説得します。ここで注意しておきたいのは,話合いで問題を解決しようとする以上,こちらも一定の譲歩をする準備をしておくことです。こちらが何の譲歩もしないという立場で入っていくと,相手方にその気があっても話合いにならないことがあります。

② 話合いが決裂しても良いという覚悟がある場合

裁判となるのは相手方も避けたいものです。ですから,こちらが話合いが決裂すれば裁判に持ち込むことを示して交渉に臨むと,相手方からの譲歩を引き出せることがあります。もっとも,強硬な態度で話合いに臨むと,相手方も話合いを打ち切ってくる可能性があります。ですから,依頼人において裁判沙汰にすることに消極的な場合は,多摩オリエンタル法律事務所ではこのような交渉方法はいたしません。

③ 話合いの方向性が概ね固まっているところで最後の調整をする場合

例えば,夫婦双方で離婚することと親権の所在や財産分与などの離婚条件が概ね決まっているような場合,弁護士がその他の細かな離婚条件を調整して離婚協議書をまとめます。もっとも,相手方がその方向性に不満を持っていたような場合,こちらが弁護士を選任すると,相手方も弁護士を選任して,これまでの話合いの経過をなかったことにしようとするので,本当に話合いの方向性が固まっているといえるか,慎重な見極めが必要です。

④ 相手方が交渉を持ち掛けてきた場合

それで話合いがまとまるというのであれば,弁護士を選任する必要はありません。しかし,相手方と直接交渉するのが億劫であったり,自分は話合いの必要性を感じていなかったりという場合は,交渉の窓口となる弁護士を選任するという方法もあり得ます。これにより,相手方が不当な交渉を取り下げたり,あるいは話合いの内容が公平適正になる場合があります。

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コロナ不況で生き残るために

 全国の新型コロナウィルス関連倒産は,11月5日16時現在で,683件に上っているそうです。もっとも,2020年の上半期(4月~9月)の全倒産件数は3956件で2004年度下半期以来の4000件割れなのだそうです(帝国データバンク調べ)。この数字を,いかに読むべきでしょうか? “コロナ不況で生き残るために” の続きを読む

コロナ対策の警戒を怠らないようにしよう!

 幸いにして,我が国のコロナ感染者数は,他の先進国に比べて低い水準で抑えられているようです。しかしそれは,国民の高い衛生意識の賜物で,コロナの毒性が弱いとか,アジア人がコロナに強いとか,そういうことは何ら実証されていないようです。例えば感染確認者数に対する死亡者数の割合でみると,日本と他国とで,それほど大きな差があるようには見えません。
 さて,ここのところ,コロナ感染者の発見者数が減少傾向を見せております。しかしそれは,7月の連休から8月のお盆休みにかけて休暇をとっていた国民が多かったためで,コロナウィルスが自然に収束していったとは思いません。ですから,コロナ感染者の発見者数は,間もなく,増加に転じていくことでしょう。
 警戒するべきは,9月の連休以後,目立った連休がしばらくないことです。ここのところのコロナ感染者発見者数の減少傾向が,全国的な夏期休業の影響だとすれば,9月以後に連休がないということは,コロナ感染者数の増加傾向に歯止めがかからないということです。
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多摩オリエンタル法律事務所での危機対応について・あるいは,危機管理マニュアルの策定(第2波への準備)は進んでいますか?

 新型コロナウィルス流行拡大の兆しが見えており,不安な日々を送っていることと思います。そのような中,読者におかれまして,いわゆる「第2波」への準備はできておりますでしょうか?
 そもそも「第2波」対応とは何でしょうか?具体的に何をしたら良いか分からないという人も多いのではないでしょうか。そこで,ご参考のため,多摩オリエンタル法律事務所で策定した第2波対応を公表したいと思います。要は,有事に備えて危機管理マニュアルを策定しておくということではないかと思います。
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民事執行法の改正について

裁判で勝っても,相手がどこにどのような財産をもっているか分からないでは,強制執行のしようがありません。ところが,相手がどのような財産をもっているかは,なかなか他人に分かるものではありません。そこで民事執行法は,財産開示手続の制度を規定しています。
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台風一過

 この連休に列島を襲った台風19号は,ここ多摩地域でも大きな被害を与えたようです。ここで法律家が気になるのは,この被害に基づき,どのような争いが生じるか,ということです。典型的には,隣の家の瓦が風で飛ばされ,自分の家の車を傷つけた,などでしょうか。
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弁護士を介入させた交渉について


弁護士を入れれば,交渉が有利になると思っている相談者がときどきいます。しかし,弁護士が介入すれば交渉が有利になるというのは,まったくありません。それどころか,弁護士を介入させたことによって,交渉がかえってこじれる場合もございます。以下,簡単に説明します。
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破産したいけど迷惑をかけられない人がいる場合

借金が多すぎて返済ができないけれども、親しい人からの借金だけは返したい、そういう相談はないですか。気持ちは分かりますが、法律的には、それはNGです。ただ、私は、違法合法の話と正義不正義の話は関係ないと思っています。そこで、ここでは、もう少し突っ込んで、違法合法の話をしていきましょう。
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