NHKの昔話裁判(カチカチ山)について

 弁護士をしていると,法曹とそうでない人との感覚の違いを実感させられることが多々あります。NHKで,昔話裁判という番組があります。例えば,そのカチカチ山で,タヌキに対する殺人未遂(?)で起訴されたウサギを擁護するネット上の声が多いようです。しかし,法曹の感覚では,ウサギに執行猶予判決が妥当と考える人は,むしろ少数なのではないでしょうか。        カチカチ山は,お婆さんを猟奇的に殺したタヌキに対し,ウサギが仇討ちをするというストーリーです。その方法は,タヌキに執拗に苦痛を与え,最後は泥船に乗せて溺死させようというものでした。まず,タヌキが背負った薪に火をつける行為,これ自体,タヌキを死に至らしめるおそれが高い,きわめて危険な行為です。また,周辺を火事が拡散するおそれもありました。この火付けによって火傷を負ったタヌキに対し,ウサギは,傷口に唐辛子味噌を塗りつけさせるというさらなる苦痛を与えます。その上でタヌキを溺死させようとしており,タヌキに対して与えた苦痛の程度は甚大というべきです。ウサギの犯行は計画性が高く,犯行当時,極めて強固な殺意を抱いていたとしか思えません。これら行為の危険性と悪質性からすれば,それだけで実刑判決は免れないでしょう。
ネット上の声は,タヌキのお婆さんに対する犯行の悪質性を指弾するものが多いように感じます。しかし,そのことは,ウサギを酌量する事情になるでしょうか。まず,現代社会では,犯罪者といえども裁判を受ける権利があります。別の言い方をすれば,犯罪者を適切に裁判することによって,これに対する処罰が正当化されるのです。裁判なき処罰は,リンチと何ら変わることはないです。ウサギの行為は,タヌキを裁判にかけ,適切な刑罰を施す機会を奪うものであり,決して正当化されるものではありません。ウサギは,お婆さんの仇を討ちたいのであれば,当局に刑事告訴すればよかったのです。それにもかかわらず,タヌキに対して殺人行為に及ぼうとしたウサギは,私憤のために手段を選ばぬ極めて危険な性格の持ち主と言うほかはありません。ウサギがした行為の異常性を思えば,相当長期間,刑務所に収容する必要があるというべきでしょう。
なお,番組では,タヌキはすでに刑務所で服役中とのことでした。

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