相撲界はどうしたいの?

多摩の弁護士で,刑事事件の示談交渉を相談されたことがない者はほとんどいないと思います。刑事事件の示談交渉の相談は,ほとんど加害者側からですが,被害者からの相談もたまにあります。
日馬富士の暴行事件の第一報を聞いて,私は,示談がすぐにまとまるのではないかと思いました。これまで多数の示談交渉を手掛けた経験からすると,仲間内の暴行事件で,加害者側も被害者側も相当な地位がある人で,事件を大ごとにすることはないだろうと,思ったからです。

    
ところが,今度の事件は,まったく示談交渉が進んでいないようです。私は事件関係者ではなく,報道の見出しにある程度のことしか分からないのですが,どうも,被害者側が,加害者側からのアプローチを,すべて拒絶しているようです。実態は違うのかもしれません。これは,あくまで,報道を読んだ限りでの印象論です。しかし,仮にその通りだとすると,被害者側は,一体,何がしたいのだろうか考えてしまいます。
日馬富士に対する刑事処分でしょうか。しかし,これまでの経緯からすれば,よほど日馬富士が挑戦的な捜査対応をしない限り,裁判所で刑事裁判(公判請求)ということはなく,せいぜい罰金刑でしょう。すでに横綱を引退して社会的制裁を受けているとみられれば,不起訴処分もあり得ます。懲役の実刑判決はあり得ないと思います。
そうではなく,この事件を契機に,相撲界を改革しようとしているのでしょうか。しかし私は,その試みは失敗していると思います。門外漢の私が“被害者側が加害者側からのアプローチを拒絶している”との印象をもってしまうぐらいです。世論は,決して今回の被害者側の対応を支持していないと思います。
今回の事件は,力士が土俵外で暴力を振るったという危険な犯罪ですから,日馬富士を擁護するつもりはありません。日馬富士に対する相応の処分は当然です。示談の成否にかかわらず,横綱を引退させられても仕方がない行為だとは思います。しかし,これは,仲間内の事件だったのですから,もう少しまともな話合いはできないものでしょうか。
スポーツマンだったら,土俵外で争うようなことはしてほしくないです。相撲界が,話合いができないほど,荒んだ社会であるとは,思いたくないです。話合いができない社会ほど,寂しい世界はありません。話合いができなくなった人たちの間に入る弁護士の仕事をしていて,つくづく,そう思います。