いわゆるSNSが社会に浸透して,一般人の誰もが発信者になれる時代となりました。誰もが表現の自由を謳歌できる良い時代となりました。ところが最近,気になる裁判ニュースがいくつか出てきたので,SNSの利用法に関する注意を喚起しておきたいと思います。
いかに表現の自由が憲法で保障されているといっても,どのような言論でも法的に保護されるというわけではありません。私が独自に整理したところでは,①名誉・信用棄損表現,②プライバシー侵害表現,③知的財産権侵害表現,④脅迫的表現,⑤ヘイトスピーチ,⑥わいせつ表現などは,違法であってSNS上での発信は控えなければなりません。②以外は刑事罰が科されるおそれがあり,①から④は損害賠償を請求される可能性があります。
以上は当然のこととしても,最近,他人がしたこうした表現を「拡散」することが違法だとする裁判例が目立ってきました。違法な表現を「拡散」することは,新たに違法な表現をすることと同じという理屈ではないかと思われます。「いいね」と好評価したことを違法認定した裁判例も出ました。これは,とある発信を好評価すると,その発信が他に「拡散」していくことを理由としているものと思われます。
ここまでくると,私は,不気味さを感じざるを得ません。最近の裁判所の動きだと,一定の言論に対し,庶民が好評価することすら禁止されるのです。このような運用を許すと,ある種の言論を社会的に抹殺することも可能かもしれません。例えば,とある判決に対して,これを事実誤認であるとか,不当判決であるとか,そのような評価をすること自体が違法とされる危険はないでしょうか。
物騒な時代になりましたが,このままですと,知人がSNSにアップした画像について,安易に「拡散」したり好評価したりすることについては慎重になった方が良いように思います。このような萎縮効果を払拭するためにも,最高裁には一連の高裁判決を破棄してもらいたいです。
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