AV出演被害防止・救済法に思う。

AV出演被害防止・救済法が施行されました。自分としては,違和感しかないです。そもそもAV出演契約というのは,公序良俗に反して民法90条により無効であると考えていたからです。ところがこの法律は,AV出演契約の成立要件を規定し,その有効性を公認してしまったのです。

考えてみてほしいです。そもそも性は,個人の尊厳を基礎づける最たるものであり,このようなものが契約の目的になり得るはずがありません。それは「私の生命を100万円で貴方に売ります」というのに準じ,「私は貴方の奴隷になります」というのと同じぐらいバカげた契約でしょう。

すべてのAV出演契約は,公表後1年間は無条件で解除可能といいますが,こういうわけで自分は,無期限で無効主張可能と考えます。したがって,その公表の差し止めも,無期限で可能とみるべきでしょう。

このように主張すると,表現の自由とのバランスが問題となりそうです。しかしながら,AVの主役はどこまでいっても出演者ですから,出演者の表現の自由こそ最大限に保護されるべきです。ですから,表現者である出演者自身がその公表を望まないのであれば,やはりその公表の差止はどこまでも認められるべきです。AV出演の契約を認めることは,むしろ出演者の表現の自由を侵害しているという意味でも不当でしょう。

私は,AVという表現自体を否定するつもりはなく,出演者自身がこれを公表したいと望むならば,これを止める理由もないと思います。しかし,これに関する契約を有効としてしまうと,出演者に一定の表現を強要することになってしまうのです。性というその表現内容の価値に照らせば,いかなる意味でもその契約を有効というべきではないと思います。今回の法律は,AV出演契約を全面的に無効とした上で,その強要や公表の差し止めについて出演者の利益に適うように制定してもらいたかったのですが,そこまで至らなかったのが残念です。

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