先日,裁判で実刑判決が確定した被告人が,当局の出頭要請に応じず,逃走したという事件がありました。聞けば,保釈中であったとのこと。このようなニュースが報道されると,「安易に保釈を認めるべきではない。」との世論が形成されないか,心配です。
報道によれば,その被告人は,判決宣告にも出頭しなかったそうです。また,裁判所が定めた住居にも居なかったそうです。そうであれば,刑事訴訟法96条1項に基づき,保釈の取消をすればよかったのではないでしょうか。その上で,しかるべく手配を整えて,被告人本人の身柄を拘束すればよかったはずです。
また,今回は,実刑判決が出て数ヵ月後の逃走事件だったとのこと。実刑判決が出ることによって保釈の効力が失われるので,今回の事件は保釈中の出来事ではなく,保釈の効力が失われたのを放置したがゆえの出来事ともいえそうです。
つまり,今回の事件は,被告人が保釈されたから起きたのではなく,身柄拘束するべきときに身柄拘束しなかったがゆえに起きた事件と言えそうです。
刑事事件で被告人の弁護をしていると,逮捕勾留されて自由を奪われている被告人は本当につらそうです。本来,適正な裁判をしなければ,このような自由の制限はできないはずです。裁判前に被告人の身柄拘束をする必要性は,すべて否定しきれるものではないでしょうが,身柄拘束された被告人の自由をできるだけ保護しようという保釈の制度も広く利用されるべきでしょう。そういう意味で,私は,「安易に保釈を認めるから事件が起きる。」式の議論に対しては,断固として,反対していきたいです。
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