債務整理と税金


債務整理の相談を受けていると、税金の滞納がある場合があります。税金は、破産しても免責されないので、注意が必要です。

税務署の側に立つと、債務整理の中で税金は、きわめて有利に扱われています。例えば、差押え。貸金などの普通の債権は、裁判を起こさなければ、銀行預金などの財産を差し押さえすることができませんが、税金は裁判をしないで財産を差し押さえることができます。破産した場合、破産者に財産があれば、税金は他の債権よりも優先して支払われます。そして、先にも述べましたが、税金は破産しても免除(免責)されません。
これはなぜでしょうか。税金は、公益的要素が強いとか、納税は国民の義務であるとか、言われています。確かに、税金は、きちんと支払わなければいけない性質のものだと思います。しかし、税金だけを、他の債権よりも保護しなければいけないという政策に対しては、疑問があります。
理由のその1
国家は、多少の税金について回収不能になっても、それで資金繰りに窮することはありません。確かに国は財政赤字に苦しんでいますが、破産者が滞納している税金を回収できなくても、それを理由に倒産することはありません。その破産者に対し売掛金を有している中小事業者は違います。彼らは、日ごろ十分な資産を有しているものではないので、その売掛金を回収できないと、本当に倒産してしまう可能性があります(連鎖倒産のリスク)。この中小企業の債権回収の必要性に比べれば、債務者に対する租税債権の取り立ての必要性が高いとは思えません。

理由のその2

租税債権について、裁判もかけずに差押えができる制度を認めるのは、やりすぎです。税務署は、そこで慌てて債権回収に走らなくても、その債務者が破産してくれれば、優先して租税債権の配当を受けることができます。しかし、破産するには、裁判所に手続費用を支払わなければなりません。それなのに、税務署が破産者の財産を根こそぎ差し押さえては、その債務者は“破産すらできなくなってしまいます”。結局、夜逃げするしかなくなってしまい、債務者の人権が脅かされることになりかねません。

理由のその3
税務署は、そこに破産のリスクを見出せば、必ず財産の差押えを図ってきます。そこには、取引先に対する売掛金も含まれており、売掛金が差し押さえられれば、その事業者は倒産してしまいます。そして、財産を根こそぎ差し押さえられた結果、破産すらできない状態になってしまいます。そうなると、債務整理の相談を受けた弁護士としては、滞納税金があると聞いても、うかつに税務署に相談できないという話になります。債務者としては、税務署に対する支払いが後回しになってしまい、かえって租税債権の回収額が少なくなってしまうおそれもあります。
何事にも優先されている租税債権ですが、運用しだいでは制度を生かすこともできるかもしれません。例えば、税務署が、その債権者が税金を支払うことができなくなっていると判断した場合、いきなりその資産を差押えするのではなく、破産を促すのです。税務署は、それでも優先的に配当を得ることができるので、大きな損はありません。しかし、そういう運用になる気配がまったく見られないのが、残念なところです。

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