債務整理について思う

 収入も財産もなく,どうしても借金を返せない人がいます。「だから債務を免除してください。」と債権者と交渉しても,あまりうまくいくものではありません。「破産したら,1円も返せません。しかし,ここで債務を免除してくれたら,破産を免れることができます。そうすると,10万円までなら返せます。」そう説明しても,納得していただける債権者はあまりいません。相手が金融機関や大手企業の場合,ますます納得してくれません。大きな会社であれば,多少の債務免除をしても経営に悪影響が出るリスクは小さいはずです。

また,しっかりした会社であればあるほど,経済的合理性,すなわち,その人から1円でも多く回収するべきである,という考えがあるはずですから,このような申出には応じるべきなのに,現実はそうではありません。相手が国や自治体にもなれば,ますますその傾向が強くなります。これは,どういうことなのでしょうか。
 
私は,これは,単純に,「関係者が責任を負いたくないから。」だと思います。大企業が安易に債務免除に応じてしまうと,「どうして,もっと債権回収を図ろうとしないのか!」と,株主から追求されてしまいます。これが国や自治体であれば,国民市民からの批判を受けてしまいます。債務者が破産でもしてくれれば,「債務者が破産をしてしまったので,貸金を回収できませんでした。」と説明ができます。しかし,大企業や自治体の自己責任で債務を免除してしまうと,その判断に間違いがあった場合,すなわち,その債務者に収入や財産がないという判断が後で覆ると,その判断をした担当者の責任となってしまいます。この責任を負いたくないので,金融機関などは,債務免除の話合いに応じたくないのではないかと考えているのですが,いかがでしょうか。
 
いま,我が国は,一点の違法も許さない潔癖な社会に向かっていこうとしているような気がします。しかし,潔癖な社会は,柔軟な対応を許さなくなります。無資力者の債務免除を任意に認めないという債権者の態度は,経済的に大きな無駄を生み出しますので,社会的には非難されるべきだと思います。しかし,これを安易に認めては,間違った判断がなされるリスクが高まるので,潔癖社会においては推奨される態度と思われます。
 
本当にそれで良いのでしょうか?どのように法律を整備しようとも,その法律が想定しない例外は,必ず,生じます。法治主義の考え方は重要ですが,そろそろ,もう一段上の考え方も模索しても良いのではないかと思う,今日このごろです。

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