法は人を無責任にする。

私は弁護士として,日々,法律を駆使して人と交渉しておりますが,私自身は「法律に従っていればよい」という考え方は間違っていると思います。理由は次のとおりです。

① 法律に完璧に従うのは不可能である。
法律は「0」か「1」かのコンピューターの世界とは違って,「言葉」という曖昧な概念を用いて制定されています。法律家は,その「言葉」をできるだけ厳密に定義しようとしますが,用いられた「言葉」の内容が曖昧である以上,その作業にも限界があります。つまり,法律の完璧な解釈というのは不可能であり,したがって法律に完璧に従うことも不可能となります。「法律に従っていればよい」という考えは,「不可能なこと」を「できる」ということであり,傲慢です。

② 法律自体が完璧な体系ではない。
私は,弁護士登録して以来,法律相談だけなら1000件以上を取り扱っています。そのどれをとっても,単純に法律を適用して判断できたことは一度もありませんでした。世の中は,無限に近い出来事に満ちています。そのすべての出来事に一律に適用できる法律を制定することは,不可能なのでしょう。そのようなところで,「法律に従っていればよい」→「法律に規定がない」→「だから何をやっても自由だ」というのは,危険です。先に述べたとおり,法律の内容が曖昧だとすれば,こうしたものを法解釈で「違法」とされてしまうリスクがあります。

③ 法律が正義であるという保障はどこにもない。
これは,多くの人が勘違いしているところでもあります。法律は,あくまで国会で形式的に決議が通っただけのものに過ぎません。それが「正義」である保障はどこにもありません。我が国戦後の民主主義体制下にあっても,「悪法」と呼ぶべきものはいくらでもありました。そもそも何が「正義」であるかは,個人の倫理観の問題であり,法律で規定できるものではありません。それにもかかわらず,「法律に従っていればよい」→「法律に従っている側が正義だ」と考えるのは,短絡的です。
法律は確かに便利です。気にいらなければ裁判所に訴え出て,法律通りの行動を強制することができます。法律は,相手方を強制する手段であって,それ以上でもそれ以下でもありません。その法律を相手方に強制して良いかどうかは,法律とは別に考えなければなりません。そこは,一人ひとりの判断となるのですが,「法律に従っていればよい」とそれが不正義でも気にしないというのは,明らかに思考停止であり,無責任ではないでしょうか。

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