着手金の相場

弁護士費用の相場は,弁護士を利用される方の最大の関心事のひとつだと思われます。中でも,弁護士を依頼した時に最初に支払う「着手金」の額は,弁護士選びの重要な基準にしている方が多いのではないでしょうか。そこで今月は,着手金の相場について,考えてみたいと思います。


 そもそも,着手金とは何でしょうか。私が所属している第一東京弁護士会の法律相談センター担当弁護士報酬審査基準によると,着手金は「事件又は法律事務(以下「事件等」という。)の性質上,委任事務処理の結果に成功不成功があるものについて,その結果のいかんにかかわらず受任時に受けるべき委任事務処理の対価をいう。」とあります。「委任事務処理の対価」というのは,要するに,”人に作業を依頼するのであるから,その作業をした分の代金をいただきたい”ということです。したがって,弁護士が依頼を途中で放り投げたような場合には,着手金の一部ないし全部を返還しなければならないのではないでしょうか。

 それでは,弁護士の着手金の相場は,どれくらいでしょうか。これは,弁護士によって着手金の考え方が違うので,「相場」という考え方はなじまないかもしれませんが,やはり法律相談センター担当弁護士の報酬審査基準が参考になります。審査基準では,着手金は事件の経済的利益(分かりやすく言えば,相手に対する請求額や,請求された額のこと。)に応じ,
①300万円以下の部分は8%以下,
②300万円を超え3000万円以下の部分については5%以下,
③3000万円を超え3億円以下の部分については3%以下,
④3億円を超える部分については2%以下としています。

つまり,500万円の請求をする場合は,①300万円の8%である24万円に,②300万円を超え500万円までの200万円の5%である10万円の,合計34万円が,着手金の相場ということになりましょうか。

 しかし,この経済的利益に応じた着手金の額というのは,「委任事務処理の対価」という着手金の性質には合わないように思われます。なぜなら,依頼を受けた事件の処理にかけられる手間は,事件の経済的利益に比例して増えるのではなく,個々の事件毎に変わってくるためだからです。ですから,経済的利益が低いがゆえに,着手金を減額するというのは,顧客サービスとしてあり得るのでしょうけれども,経済的利益が高いがゆえに着手金を増額するというのは,顧客対応としてあり得ないように思うのです。

 それでは,適正妥当な着手金とは,どのようなものでしょうか。それは思うに,その事件の処理にかける時間数 × 弁護士を利用する1時間あたりの単価 というものでなければならないでしょう。しかし,「弁護士を利用する1時間あたりの単価」は,1時間あたりの法律相談料などを参考に,事前に決定できますが,「その事件の処理にかける時間数」は,なかなか受任段階で計算できるものではありません。そこで参考になるのが,先月,私が開示した,事件を受任して解決するまでの平均処理日数です。多摩オリエンタル法律事務所で受任した事件の平均処理日数は,288日でした。そして,ここから先は感覚的なものになるのですが,1ヵ月あたりに費やす受任事件の処理時間は,平均するとだいたい6時間程度になるのではないかと思われるので,「その事件の処理にかける時間数」は,平均して,60時間弱ということになりそうです。ここに,1時間あたりの法律相談料を乗じれば,本来あるべき着手金の相場が計算できるはずです。

 もちろん,事件によっては,法人破産のように管理しなければならない財産が多額となり,これに比例して弁護士の責任も重くなるようなものもあるので,受任事件の処理時間だけで着手金の額を決めることはできません。ただ,着手金とは「委任事務処理の対価」であるという原則から,合理的な金額を設定するよう,心掛けたいものです。

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