司法取引について

捜査と公判の見直しに向けた刑事司法改革の最終案が,法制審議会で決まったそうです。
その中で,司法取引の導入が盛り込まれているのが気になるところです。予定されている制度は,検察官が被疑者などに起訴しないなどの見返りを与えて他人の犯罪を供述・証言をさせるというもので,経済事件や銃器・薬物事件が対象とのことです。

 この日本版・司法取引制度は,慎重に運用しないと機能しないのではないでしょうか。あるいは冤罪を産むことになってしまうのではないでしょうか。

例えば,被疑者が自白しているケースを考えてみます。この場合,通常,被疑者は,すべての真相を告白しようと考えているので,あえて司法取引制度を利用する必要はありません。
 
次に,被疑者が否認しているケースを考えてみます。ここで司法取引を持ちかけると,いかに「他人の犯罪」に関する事実とはいえ,自分の犯罪について自白することを求められることになります。当局が想定しているケースは,薬物事犯などで「~から入手した。」という供述を得ようとする場合などでしょうが,司法取引で薬物の入手を認めると,この時点で,自白成立です。
 
こうしてみると,司法取引は,自白している被疑者に対してはあまり効果がなく,否認している被疑者に対して自白を求めるツールとして機能することになります。
 それでは,このような自白を求めるツールは必要でしょうか。思うに,人は,信頼した相手に対してしか真実を述べません。それが,犯罪事実に関するものであれば,なおさらです。そこで,取調官(あるいは弁護人)が,最初に被疑者としようとするのが,信頼関係の構築なのです。被疑者と信頼関係を構築した上で自供を得れば,その内容はほぼ信用できるとみて良いでしょう。
しかし,この信頼関係の構築というのは,口で言うほど易しいものではありません。そこで,司法取引なのでしょうが,これで信頼関係なしに得られた供述にどれだけの信用性があるのか,私には疑問です。
 
司法取引をめぐる議論は,慎重に行ってもらいたいものです。

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